文字なし地図の恐怖 (2012年7月掲載)

 本職が営業ながらイラレ・フォトショ・クォーク等ののDTPソフトを現場(制作)より先に使い出し、本職の方もテレアポで順調に顧客を獲得し、当然の私はいい気になって調子に乗って過信して『イヤな奴』になっていた。
 先輩の営業のやり方を見下し、現場(制作)を舐めてかかり、自分ひとりで結果を出したと大いなる勘違いをしていた。
 当時、アナログ製版からイメージセッターでの製版フィルムや印画紙出力に変ったばかりで、社内の制作室もデザインや版下制作に慣れていない状況だった。
 そういう状況が拍車をかけ、「自分で仕事を取ってきて、自分で制作して納品してる。オレは凄いんだ。」と・・。

 朝出社すると、お客さんから「チラシの地図の文字が抜けているけど、どうなっているんだ!」と2日後に折込予定のチラシのサンプルを見て電話してきた。新店オープンのチラシでお客さんの怒りはハンパない感じだった。
 原因は直ぐにピンときた。データを確認すると案の定・・。

 ミスの原因を言うと、「スミ(K)をC+Y+Mに置き換えなかったため黒い文字が抜けた」
 このお客さんはパチンコチェーンの本部で、テレアポで訪問した際に提示された金額が厳しい金額だった。
 そのため4色ではなくスミ抜きの3色(CMY)にして印刷代を節約した。(それでも、月2回×6店舗のチラシを担当してそこそこの売り上げにはなった。)
 イラストレーターで文字を打つとスミベタになる。それを3色ベタ(CMY)に置き換えなかったため「C版、M版、Y版」で出力し「K版」は出さなかったので、スミ文字が消えるという単純ミス。
 自分でデータを作って自分でフィルム出力をしておきながら、忙しさに追われてロクに検版もせずに印刷会社に渡した。
 自分ひとりで独りよがりでやったため第三者の目で検版(校正)される事が無かった。

「データを直して刷り直して・・、間に合わないかも・・」、正直、パニクって思考停止って感じになってしまった。
 急いで社長に相談すると「今から刷り直したら間に合わないから、折込センターから刷り物を引き上げて『刷り込み』でいこう」。 そして、「客の怒りを考えると今はオマエ(私)は表に出ないほうがいい。客の対応の方はオレ(社長)が何とかするから、刷り込みの手配で動いてくれ」と指示を受ける。
 急いでデータを修正し刷り込み用に印画紙出力をし、引き上げた刷り物を持って軽オフの印刷会社に持ち込む、軽オフの会社は準備していてくれて、持ち込むと直ぐに作業に入ってくれた。夕方に折込センターにチラシを再び持ち込み、ギリギリ間に合った。


 普段から社長が口にしていた「好きなように、存分にやってくれ。何かあったらいつでもケツを持つ。」という言葉が沁みた。
 刷り込みをしてくれた会社は見下していた先輩の知り合いの会社。先輩も軽オフの会社も快く対応してくれた。

  「バカたれ!コレで少しは目が覚めただろう」と社長。
  「印刷をやっていれば、誰でもあることだから。」と先輩。
 私のミスをこれ以上は誰も責めなかった。