アカって何色? (2012年5月掲載)

 まだPCではなくカッター片手に職人が活躍していた大昔の製版会社でのどうでもよい話ですが、ヒマなら聞いて下さい。

 私が印刷の業界に入って2・3ヶ月の頃、製版(印刷の原版を作る)の事をほとんどわかっていないのに製版営業なるものをしていた。しかも固定客回りではなく、テレアポによる新規開拓なんてことをしていた。今なら怖くてとてもできない。
 そんな時にテレアポである広告代理店から初めての注文をもらう事になった。テレアポで面談したその代理店の営業部長さんが「試しに出してみよう」という事で発注してくれたモノだが、新しく獲得した仕事だと言う。
こっちも「新規一発目の大事な仕事」なら向こうにとっても同じ「新規一発目」。

 モノは「2C/2Cのスーパーのチラシ」で製版会社的には売上げは大きくない。 しかも、チラシだから作業は手間がかかる。
「製版の事をロクに知らない新米が大して金にならない面倒な仕事を持って来やがって!」という空気が現場に漂う。 「色校正はスミと『アカ』でいいんだよね。」と現場の責任者がなぜか念を押す。

 翌日、出来上がった校正を見ると「マゼンタスミ」の2色刷り。
アカスミって言ったじゃん!」と私が言うと「製版でアカといったらマゼンタのことなんだ!」と現場責任者。
確かにマゼンタ版の事をアカ版というし、シアン版はアオ版という。世間でいうアカはキンアカ(金赤)という。
 でもそんな事当時の私は知らない。どう考えてもシアンは「水色」だし、マゼンタは「ピンク」だと思う。なんとなく納得できないでいた。
 腹は立つが知らない方が悪いと言う気持ちもあり、何よりお客さんの事を考えるとそんな事を気にしている場合ではない。

急いで色校正屋さんに刷り直した場合の時間を確認し、お客さんに状況を伝え判断を仰ぎ、「時間が無いので刷り直した校正刷りを○○駅まで持ってきて欲しい」との指示に従い、○○駅で渡す。

 結果的にこの時のミスに対する対応を評価されて、このお客さんから多くの注文をいただくことになるのだから世の中わからないもの。


 この話を聞くと「当時の現場責任者は性格が悪い」と思うかもしれないが、当時の製版会社では当たり前の事だった。
 お客さんだろうが営業だろうが製版や印刷のことを知らないとナメてかかる。

 性質の悪い連中だが、今のDTPオペレーターより頼りになる。
 こっちが結果を出して認めさせれば、徹夜でも何でもして仕事を仕上げてくれる。
 自分で考え、プライドを持って仕事をしている。
 そんな連中がたくさんいた時代を少し懐かしく思う。